目次
手を握る
「本当に、いいんだね?」
問いかける俺の目を見つめて、君はコクンと小さく頷いた。
「じゃ、いこっか」
そう微笑んで差し出した手にのせられた君の手を、強く、強く握りしめた。
二人の吐く息は真っ白で、重ねられた手の温もりだけが俺と君の存在する証のような気がして、少し寂しくなった。
(手を握る・終)
ありふれた
睦月の暮れ、日付が変わったか変わらないかぐらいの深夜。
「眠たそうだね。寝てもいいよ?」
狭い車内、車を運転している青年が助手席に座る少年に言葉を掛ける。
「いいんですか?…なら、お言葉に甘えて」
少年は、目を閉じる。すぐに規則的な寝息が聞こえてきた。
これは、これはただの×××。
(ありふれた・終)
ねぼけまなこの
「目ェ覚めた?海、ついたよ」
助手席に座る少年が、ゆっくりと、重たそうに瞼を持ち上げたのを見て問いかける。
真冬の深夜の海に来るような物好きなんて、早々いないだろう。俺のその読みは当たっていたみたいで、誰もいない。
俺はまだ眠たそうに目を擦る少年を横目に、これからの事を考える。
(ねぼけまなこの・終)
内緒だよ
「雨、酷いですね」
放課後の、もう誰もいない昇降口に、先輩と二人きり。雨は、止みそうにない
「そうだねぇ……あ、そういえばうち結構近いからさ、来ない?」
突然、そう切り出す。
「いいんですか?」
「勿論! あ、でもね」
皆には、内緒だよ――そう悪戯っぽく笑う先輩に、見とれてしまったのは、内緒だ。
(内緒だよ・終)
ハッピーブーケ
「……お前か、犯人は」
靴箱、ロッカー、机の中。今日一日自分のまわりのありとあらゆるところを埋め尽くしていた花々。もちろん造花であるそれを腕いっぱいに抱えて、彼は少し目を細めた。
「綺麗でしょう? 似合ってますよ。とっても」
彼はそう、からからと笑いながら俺の頭の上に花を追加した。
(ハッピーブーケ・終)
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